ミヤザキのひとりごと

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【映画感想】三度目の殺人(ネタバレあり)

 

ダンケルクの感想、書こう書こうと思っていたら日が経ってしまい、その間に三度目の殺人を見てしまって考察が捗ったので先に書くゾ。)

 

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端的に言うと、難しくて素晴らしい映画でした。

 

是枝監督ならではのローテンションで展開していく作風、そして物語を着地させずにエンドロール。

 

好き嫌いは別れると思いますが、僕は大好きです。はい。

 

退屈な展開が続いた中で、この映画の本質三度目の殺人というタイトルの意味に、個人で解釈出来たとき、この映画の深みを知ることになるんじゃないかな〜。

 

下半期に見た邦画の中じゃかなりミヤザキ評価高いです。何様って感じだけど。戯言です。観て損は無いです。

 

ということでネタバレありで感想、というか考察書いて行くぞーー!!

(見る予定の方はまず劇場へ。見ない人はこの記事で映画館へ行きたいと思ってくれたらうれしいです)

 

 

1・あらすじ
2・法廷ミステリーの体裁をとった寓話
3・役所広司の素晴らしさ、俳優陣の演技

 

1・あらすじ

 

 殺人の前科をもつ三隅(役所広司)が解雇された工場の社長の殺害容疑で起訴される。死刑が確実なその弁護を担当する重盛(福山雅治)はなんとか無期懲役にしようと事件を洗いなおすが、その過程で被害者の妻・美津江(斉藤由貴)から依頼されたとする供述が三隅から飛び出す始末。動機も二転、三転し、さらに被害者の娘・咲江(広瀬すず)のおぞましい秘密が暴露され、事件の真相は〈藪の中〉の様相を呈していく。

三度目の殺人 : 映画評論・批評 - 映画.com

 

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今改めてこのあらすじを読み、予告を見ると、うめーーーー!って思う。と同時に卑怯だぞ!とも思う。違う映画みたいな予告。法廷ミステリー、サスペンスだと僕も思っていたし。

三度目の殺人っていうタイトルだから、二度殺人を起こしている犯人が実はもうひとり殺していた!みたいな。

 

 

でも違いました。簡単に言うと寓話でした。

 

2・法廷ミステリーの体裁をとった寓話

 

まあこれは個人の解釈なので、それぞれいろんな捉え方があって良いと思うのですが僕はこう考えました。

 

まず一度目の殺人

 

これは物語上ではあまり語られませんでしたが、高利貸の人物を殺害していることが弁護士たちのセリフから分かります。30年服役しているのだから無期懲役の刑が執行されたと予想出来ます。この時点で三隅(役所広司)はヤバイ人物です(笑)。

 

二度目の殺人

 

この映画の大筋はこの殺人についてです。

三隅が務めていた工場の社長を殺害し、その後財布を盗んだ罪として強盗殺人の容疑。

 

強盗殺人を犯した二度目の殺人も、犯人は三隅で疑う余地はありません

 

この映画で重要となるのは、なぜ殺したか、ということ

 

この映画で度々出てくるセリフ。

「生まれて来ないほうが良い人間もいる。」

 

そして最後の重盛(福山雅治)が言ったこのセリフ。

「器...。」

 

この2つのセリフをキーワードとして個人的に解釈すると、三隅自身に意思は無いんだと思います。

三隅は裁きを実行する「器」であって、「生まれてこなければ良かった」と裁いたのは広瀬すず演じる杉江

杉江は工場の社長の娘であり、その実の父親から性的暴行を受けていた。そんなつらい状況を抱えた杉江を娘のように可愛がっていた三隅は、その気持を汲み取り犯行に及んだと考えます。

 

その中で、工場の社長の妻、美津江(斉藤由貴)が隠していた工場での食品偽装、メディアが勝手に作り出す三隅と美津江の不倫疑惑、それらがまた事件を混乱させていきます。

 

弁護士の重盛と娘のシーン

関連性は無さそうですが、こういう物語に無駄なシーンはありません。娘は「困った時助けてくれる?」って言いました。重盛はそれを約束したんです。

 

重盛は三隅に、娘と杉江を重ねているんじゃないか?と言いましたが、本当は重盛が自分の娘と杉江を重ねていたんじゃないかな?と思います。

 

後半、三隅が急に犯行を否定しだしますが、それは杉江が父親に性的暴行をされていた事を赤裸々に検事の前、法廷で話さなければなならない辛い未来が待っていることを悟り、自分が犯行を否定、死刑になることでそれを防いだ。杉江を守ったんです。

 

三隅の深い愛。普通の人間では推し量ることの出来ない愛

 

留置所の中で小鳥に餌をあげようとしたシーンがありますが、それは三隅が愛に飢えている、愛を与えたい人物である、という描写だと思います。

 

そしてそれを弁護士重盛は汲み取った。汲み取ったのと同時に、娘と重ねたと考えます。

 

「困った時助けてくれる?」

 

映画の表の筋書きでは急に三隅が犯行を否定し、それを弁護士として信じ、全力で擁護するかっこいい弁護士ですが、裏の筋書きで、重盛が三隅に語ったことは全て重盛自身の考えであり、三隅はその考え、意思に沿っただけ、というのがあると思います。

三隅の顔に重盛の顔が反射されて重なる演出があったのはそういう意図があると。

 

 

 

そうだとしたら、

 

三度目の殺人は、三隅の死刑、弁護士重盛による裁き。

 

そう考えることが出来ます。

 

ラストシーン

 

重盛は十字路の真ん中に立っていました。

十字は裁きを意味する。三隅が工場の社長を殺害したときも十字の焼け跡。重盛が裁きを行ったと裏付けるシーンだと思います。

 

そして十字路なのはどの方向にも進める。この事件を糧にして良い方向へ進むのか、それとも弁護士としての在り方を駄目にしてしまうのか。先はわからないよ、という演出かな、と、

 

決して重盛が三隅を殺そうなんて考えてはいないんです。ここが山田孝之主演の映画「凶悪」とは違うところ。軸で似ているところはありますが、この映画はもっと深いところに視点を置いています。

 

この物語の本質

 

人が人を裁くとはどういうことか。裁判員裁判、法廷の在り方、弁護士と容疑者の関係、そこらへんにメスを入れた、風刺を用いた物語。

 

僕が寓話だと言ったのは三隅がリアリティに欠ける人物だからです。

器である人間。人の心を汲み取りそれを実行できる人間なんて果たして本当に居るのか。だいたい人を殺す人間の心情なんて普通の人間からしたら分からないんです。

自分の意志がないからこそ、裁判官というモノに憧れを抱いていた。

そんな人物を用いて上述した風刺を描いた。とすれば、法廷ミステリーの体裁をとった寓話だと考えられます。

 

法廷シーン

 

真実とは何か。それを語る場であるはずの法廷シーン。

 

個人的に是枝監督が凄いなあと思ったのがこのシーンを茶番にしたことです。

 

杉江が法廷シーンのあと重盛に「誰も本当のことを言わない」と言いました。検事も弁護士も妻も杉江自身も、そして三隅も。真実が語られないまま三隅の死刑は確定します。

 

形式だけのそれは茶番でした。是枝監督が何を伝えたかったのか、静かな怒りを感じました。

 

社会のシステムで、効率よく三度目の殺人が行われてしまった、これだけは事実なんですよね...。

 

 

3・役所広司の素晴らしさ、俳優陣の演技

 

役所広司にああいう役をやらせれば右に出るものは居ないでしょう。いやー素晴らしかったです。表情の作り方、セリフの間、圧倒されました。この映画の三隅という人物が

難解で深いのは役所さんが演じたからだと思います。

 

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広瀬すずちゃん、というか杉江が階段で涙したシーン、泣いてしまいました。憂いを帯びた寂しげな表情。広瀬さんどんどん演技に深みが増しているというか、表情の作り方が凄いです。「怒り」に続いてまた性的暴行されててしんどい。

 

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福山雅治はやっぱかっこいよなあ〜、たまにあの顔面が邪魔するけど今作だとそれが感じなくて、とにかく渋かった。役所広司と毎回対峙する接見室でのシーンはスリリングで息を呑みました。

 

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他のキャストも妥協を許さない演技派揃いで素晴らしかったです。

 

 

 

 

この映画を観て何を思うか、何を考えるか、それを提示した是枝監督は何を思ってこの作品を作ったのか。映画と同様、真実は闇の中ですが、こうやって自分の中で解釈出来たことでより一層映画の深みが増しました。

 

素晴らしい映画なのは間違いないので、観てない人は観てほしいです。

 

 

おわり