ミヤザキのひとりごと

好きなものに関してああだこうだ言う

「フロリダ・プロジェクト」と「万引き家族」は"今”観ないといけない映画だと思うっていう話

 

この木が好きなの。倒れてもまだ育っている所が』

 

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ヒューマントラストシネマ渋谷へ向かう途中、ダンボールで作られた”家”を横目にしながらコンビニでアイスを買い、映画館へ、2回目の「フロリダ・プロジェクト/真夏の魔法」を観る。ムーニーの号泣シーンで無事自分も涙腺爆破。もう一本映画を観て帰りに美味しいご飯を食べて帰宅。

”貧困”というものに直面したことがあまり無い自分はこういう映画を観て色々感じたりしつつ行動も起こさないし、ああ、偽善者だなー自分、と思いながら何をどうすれば良いのかも分からないし、そんなことを考えていたら今朝のニュース。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

やりきれない気持ちになってしまいました。子供は親を選べない。

でも、それでも、親の愛情を受けようとする。

 

そんな気持ちになったのも(もともと子供が好きっていうのもあるけれど)「フロリダ・プロジェクト」と「万引き家族」を最近観て色々考えてしまっているからです。だから、せめて布教活動でもしようかな、と。

 

(※若干のネタバレありなので気をつけてください)

 

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”貧困”というか”格差”というモノで危うい均衡を保っている国がアメリカで、あの「夢の国」があるフロリダ州にも大きなそれがある。そんなフロリダ州では2018年に高校で銃乱射事件が起きているのも記憶に新しい。

 

個人主義というものが気風にあるアメリカでは”家族”とは言えど、母親でも1人の女であり、子供も立派な人間であるという価値観です。日本ではそこらへんの途上国で、少しでもそこに近づけようと意識し始めています。

しかし、まだその価値観が全体として行き渡っていない日本では「フロリダ・プロジェクト」に賛否が巻き起こりました。母親であるはずのヘイリーの無自覚な行動の数々、その子であるムーニーの日本ではなかなか見ない過度なイタズラ。

勿論、僕もヘイリーは母親失格だと思います。家賃もロクに払えない、食事も用意しない、すぐキレる、そして売春。でも、母親なんです。ヘイリーがムーニーに見せる表情はいつも笑顔、子どもの前では決して辛い表情を見せない、勿論暴力などの虐待もしてない、だからこそムーニーはあんなに楽しそうなんです。親と子の関係で言うとどうかと思うけど、2人には友情があったんだと思います、親と子でも。

 

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子供視点で描かれた構造が素晴らしかったです。ムーニーからすると貧困だとかそういうのは分からないし、隣に”夢の国”があろうが無かろうが目の前に冒険の日々があって楽しい日々をおくれる。でも、それを蝕んでいくのは”貧困”であり”社会”であり”大人”。

 

監督のショーン・ベイカーは今作を撮るにあたって是枝監督の「誰も知らない」を見たらしいです。子役の演技に生かされてると思いました。

 

その是枝監督の最新作が「万引き家族」、先行上映で見ました。

 

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こちらは日本の話なのでリアリティを感じ、ひたすら痛かった。

 

前述した虐待の事件と通じるものがあるし、この作品はフィクションだけど(実際にあった不正年金受給事件を題材にしているとはいえ)今この日本にも”子供らしい”が出来ない子供が居る。

 

万引き家族』でキーになる少女、凛。冬の団地の廊下で震えていた所をあの”家族”に拾われる(簡単に言えば誘拐)。「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」と連呼する小さいこ女の子。同じく母親に生まれてこなければ良かったと言われて育った信代を含め、放っておくことが出来ず”家族”に。

場面が冬から夏に切り替わった時の凛の明るい顔。半年経ってあの”家族”とも打ち解けたのか笑顔も見えるようになります。

誘拐は悪いことです。でも凛は救われたのかもしれない。あの時の治の「コロッケ食べる?」が希望だったかもしれない。助ける行為が犯罪だっただけ。

 

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”犯罪”によって結ばれたボロボロになったジェンガのような”家族”。崩れるときは一瞬。

でも海のシーンは本物の”家族”なんじゃないかって思うくらいに素敵で繊細で愛が見えて、是枝監督の描く”家族”が見えた瞬間でもありました。

 

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この美しい”家族”の姿は「誰も知らない」で観客に投げかけた問題提起の1つの答えだと思います。

 

子供は親を選べない。でも、かつて拾われて治の息子になった祥太は「わざと拾われたんだ」と言いました。子供が親を選んだ瞬間だったのかもしれません。

 

 

 

「フロリダ・プロジェクト」では愛情を注ぐも、母親らしくなれないヘイリーと何も分からないムーニーが”貧困”やもっと根深い何かによって引き裂かれてしまいます。

万引き家族」では犯罪によって結ばれた”家族”が深い愛情で交わるも”法”によって引き裂かれてしまいます。

 

安藤サクラさん演じる信代が警官に「子供たちになんて呼ばれてたの?」と聞かれます。そこで信代は「・・・何だろうね・・何だろうね・・・・」と涙をぬぐいながら言います。あの時の悔しさと悲しさが入り混じった”母親”の姿に心打ちました。勿論名演あってこそのそれです。素晴らしかったです。

 

 

”家族”って何か、”母親”って何か、”正しい”って何か。

 

倫理観や今まで自分が積み上げてきた”普通”がこの2作品によってぶっ壊れました。一方はアメリカ、一方は日本。違う国だから価値観は違うけれど、根底にあるものは多分一緒です。

無意味な解決策など提示せず、マイノリティな環境に置かれた”家族”に優しく寄り添ってくれるこの2つの作品が大好きです。

 

別に押し付けはしません。ただ、この2作品を観ることで”知る”いいきっかけになると思います。

 

少なくとも自分は考えるいいきっかけになりました。